| 1.はじめに |
担任教師への不信感から不登校となり、飲酒、喫煙、家庭内暴力などを呈した女子中学生に、病棟内・内観療法を施行した。継続した登校、家族関係の修復、問題行動の改善が可能となったため、治療経過を報告する。 |
| 2.症例紹介 |
A子。中学○年生。両親と兄、本人の4人家族。両親共に自営で共働き。父親は、ほぼ毎日多量飲酒し、酔うと母親に手を上げるなど酒乱傾向があった。父の酒乱行為への恐れから、A子は全く口を聞かなくなったため、怒った父が手を上げることもあった。A子は、小学○年時から飲酒、喫煙、家庭内暴力などが出現、中学入学後、担任教師の生活指導に対し、自分ばかり注意をされると差別を感じ、不信感を抱き不登校となった。知人による紹介で母と来院し入院となった。
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| 3.病棟内・内観療法の経過 |
入院初日より、集中内観導入となった。テーマ「母に対する自分」から始めた。内観3問に添った記憶回想が可能となった。レポート「母に対する自分を調べてわかったこと」には「今まで、してもらったこと、迷惑・心配かけたことが多いのに、してあげたことが少なかった」と感謝の気づきを記入した。内観2日目テーマ「父に対する自分」では、レポートにはほとんど書かず、口頭で「自分が避けていたため関わりが無かった」と話し、父に対しての陰性感情の消失には至らなかった。
内観終了時、両親来院し、家族同時内観を行った。母の促しにより、A子は父に隠していた飲酒や喫煙を認め「父は酔って母を殴り、八つ当たりをしていた。それを見て、自分も殴られるのではないかと怖くなり、あまり関りたくないと思った」と自分の気持ちを初めて父に素直に伝えた。一方父は「自分は子供の頃から親元を離れていたため、娘のことを何から何までする妻が許せずあたっていた」と話し、謝罪の言葉を述べた。母も「夫が酔ったときに隠し子がいることを娘に話し、娘と夫の摩擦が起きた。私自身、混乱している娘を受け止めてあげる余裕が無かった」とA子に詫びた。最後に、A子は[1]父と会話をすること、[2]きちんと登校すること、一方父は、酒を程々にすることを約束し、家族同時内観を終了とした。入院期間7日間で退院となった。
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| 4.予後 |
退院後2ヶ月が経過したが、毎日登校している。内観を通して問題視された父親との関係は、すぐには改善されないものの、親子で継続して食事をとっている。
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| 5.考察 |
病棟内・内観療法により、してもらったことや幸福だったことを具体的に回想し、与えられた恩恵体験の再認識により、認知の変化が可能となり、父への陰性感情が緩和した。更に内観終了時、家族療法を通した親から子へのお詫び、親子間のスキンシップなどが家族関係修復への契機になったと考えられた。不登校やひきこもりは、その期間が長い程社会適応が困難となり、後の人生に大きな影響を与えることが多い。ゆえに、早期発見と適切な治療が重要である。思春期による治療の際、本人への関わりのみに限らず、家族療法的関わりが短期間での有効性を示唆すると考えられる。
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